金箔ワークショップ【2023.11.25@町田薬師池公園四季彩の杜西園】

町田市にある薬師池公園四季彩の杜西園のラボ・体験工房で、金箔で絵を描く、エグロミゼワークショップをアトリエアルケミストさんと共催で開催しました。

手前の画像はイギリスのエグロミゼ作家のTuesday Riddellさん
金箔を慎重に削る様子

ヴェッレ・エグロミゼ(Verre Eglomise)

ヴェッレ・エグロミゼ(Verre Eglomise)とはフランスの金彩技法で、ガラス板にゼラチンで貼った金箔を削って絵を描く技法です。ヨーロッパの保存修復では、額縁やヨーロッパの建築装飾の修復などでギルディング(金箔貼り)の技法を使用しますが、その一環でエグロミゼ技法を修復の学校で学びました。 

ゼラチンを使いとても弱い力でガラス板に接着しているので、ひっかくと爪でも簡単に剥がれます。それを利用してスクラッチカードのように絵を削っていき、最後には黒い絵具やスプレーでコーティングして保護します。細かい表現も可能で、陰影や立体感を持たせることも出来ます。私が修復を学んだのと同じ学校のファインアート科を卒業されたTuesday Riddellさんのエグロミゼ作品は、驚くほど繊細です。

日本では知られていない技法ですが、仕上がりが漆と金箔の蒔絵のように見えて、なんだか日本的です。

金箔ってどんなもの?

金箔が使われたものは見たことあるけれど、金箔自体を見たことのある人はそんなに多くはないのではないでしょうか。

ヨーロッパの金箔はブックという一片を閉じた冊子状の油紙の間に金箔が22枚程入っています。ふっと息を吹くとふわっと舞い上がるような軽さで、その薄さにわーっという声が上がりました。

私が初めて金箔を見たのは、修復の学校でギルディングを教わった時でした。その時の驚きと金箔の魅力を子どもたちにも体験して欲しくて、金箔の1万分の1ミリという薄さを体験してもらいました。

金箔をパレットに出して、小さく金箔を切って子どもたちの手のひらにのせてみることに。「のせてみたい人?」と聞くと、みんなから手が上がり、みんなの手に竹の箸を使ってのせました。手には油がついているので、薄い金箔はくっつきます。なので、使う道具類も油がつかないように気をつけたり、アルコールでふき取ったりします。

金箔を子どもたちの手のひらにのせる
金箔は1万分の1mm

のせた金箔を指でこすってみると。。

「わー、ちっちゃくなった!」

薄い金箔は、擦るとほぼ消えてしまいます。 

道具探究

金箔に絵を描く前に、練習としていろいろな道具を使ってどんな表現ができるのか、アルミ箔を貼ったガラス板で探究しました。テーブルに並べたさまざまな道具。この技法には、これを使わなくてはいけないという決まりはなくて、道具を工夫できるところが面白いです。

探究した道具
道具を選んでいる様子

竹串、つまようじ、サンドペーパー、スプーン、木の切れ端・・・

小さなたわしがついた道具でこすると、芝のような表現になったり、

ステンシルブラシで何度もトントンとたたくと、ふわっと雲のようになったり。

金箔をスクラッチ

次は金箔を貼ったガラス板で本番です。大人はショットグラスの底に貼った金箔に絵を描くことに挑戦しました。

下書きをしたいという子がいたので紙を渡したら、次々にみなさん下書きタイムに突入。スマホで画像を検索して、ゴジラやバラ、上記の作家さんの作品の一部の模写など、それぞれデザインを考えます。

竹串や粘土ベラ・・アルミ箔で練習した道具で気に入ったもので、輪郭を描き始めます。

「金箔を削るのもったいない気がする。。」

「あ、文字を書いたら逆になっちゃった。」

そうなんです。このエグロミゼ、裏側から描いているので、表側は金箔を貼っていない方。なので、絵が反転します。言うのを忘れていました。そうか、、文字を書きたい人も当然いますよね。私が学んだことの一つです。

コンサバターが使う綿棒つくりを体験

はじめは躊躇したり、失敗しつつも、だんだん削るのが楽しくなってきたよう。

ここで少量の水を使って大きな面の金箔をとりのぞく裏技を紹介しました。

修復では竹串と脱脂綿を使って、自作の綿棒をつくりながらクリーニングをします。特に立体物は曲面や表面の状態に合わせて、綿棒の綿の部分の大きさや硬さを変える必要があり、一つのクリーニングにその都度作っては捨て、作っては捨て・・。なのでスムーズに早くつくることも必要です。

竹串に脱脂綿を巻いて綿棒つくりに挑戦

綿あめみたいに竹串に巻きとって、キュッと絞ってかたちにするのですが、

みんなちゃんと自作の綿棒が出来ててびっくり。ハマったようで、何個もつくって練習している子もいました。

できた!
自分で道具をつくって使うのは楽しい

道具で出来ることが変わると、作品も変わっていく。。

少量の水をつけた綿棒で金箔を拭うと、ゼラチンが溶けるので金箔がとれます。大きな面がきれいに拭えるようになりました。 

ぐんぐん金箔を削っていく子や、細かく残った金箔をきれいにして、みんな集中モード。

バラの花びらの間を慎重に削っている様子

出来上がった作品は、今回はコーティングはせずに、黒い紙をフレームに挟むことにしました。家に帰っても続きが出来るように、竹串と脱脂綿をお渡しました。

時間もそろそろ終わりに近づき、みんなでつくったものを並べてみてみました。

エグロミゼという金彩技法をみんなでやってみることを通して、技法を知ってもらうだけではなく、金箔という素材自体や、コンサベーションの分野を少し垣間見てほしいという願いがこのワークショップの目的としてありました。

修復で使う綿棒つくりを気に入ってくれたり、道具の探究が面白かったという声を頂いたり、ちらっとテーブルに置いてあった修復のファイルを見ていろいろ質問してくれたり、とても嬉しい気持ちになりました。

ご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた皆さま、本当にどうもありがとうございました!

これからも修復を知ってもらうワークショップや、子どもの探究や好奇心、素材に触れながら手を動かす機会をふやせるワークショップを企画、実施したいと思っています。

みんながつくった作品
みんなのエグロミゼ作品とショットグラス

当日のサポートをしてくれた日本画家の斎藤さゆりさん、ワークショップの企画、準備にご協力いただいたアトリエアルケミストさんに感謝です。ありがとうございました!

このワークショップは、Art and Craft Communicationの活動の一環として開催しています。

写真撮影:森尾さゆり、齋藤さゆり(写真は、参加者の許可を得て掲載しています。)

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